【第5弾】宮崎県 Kick-offイベント: ピョートルと地域商社こゆ財団齋藤のオンライン対話講座 :誰もが自己実現できる社会をつくる方法

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国の地方創生優良事例にも選ばれた、宮崎県新富町のこゆ財団とのコラボイベントを開催しました!新富町を舞台に自己実現を加速させる新プロジェクトを発進させる試みとして、こゆ財団齋藤さんとピョートルとの対談を企画しました。

日本の教育から、東京一極集中の呪縛、地方創生や、これからの起業家精神について、熱いトークの模様をレポートします。



齋藤 潤一 氏

1979年大阪府生まれ。米国シリコンバレーの音楽配信会社でクリエイティブディレクターとして従事。帰国後、2011年の東日本大震災を機に「ソーシャルビジネスで地域課題を解決する」を使命に全国各地の地方自治体と連携して地域プロジェクトを創出これらの実績が評価され、2017年4月新富町役場が設立した地域商社「こゆ財団」の代表理事に就任。1粒1000円ライチの開発やふるさと納税で寄付金を累計50億円以上を集める。結果、移住者や起業家が集まる街になり、2018年12月国の地方創生の優良事例に選定される。農業の人手不足の課題を解決するために、農業の自動収穫ロボットAGRIST株式会社を2019年設立。


ピョートル・フェリクス・グジバチ

プロノイア・グループ株式会社 代表取締役  株式会社TimeLeap 取締役
連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。モルガン・スタンレーを経て、Google Japanで人材開発、組織改革、リーダーシップマネジメントに従事。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。ベストセラー『NEW ELITE』他、『0秒リーダーシップ』『PLAY WORK』など著書多数。ポーランド出身。





日本の教育に必要なものとは


ピョートル:教育というのは、今の日本社会に現れている課題や世界の問題を考えればすごく大切です。だけど僕自身、教育という言葉は嫌いなんです。

教育も Education も決まった形があって、決められたこのボックスにたどり着く、資格をとるという要素になっていますよね。

20世紀初頭に労働者管理の理論を提唱したフレデリック・テイラーによれば、1910年ぐらいに今の社会のベースとなる教育制度を立ち上げてしまったということになります。

彼らの言葉を読むとちょっと恐ろしいんです。当時のロックフェラーは、Thinker、いわゆる思想家を否定し、当時の大量生産に呼応する労働者であるWorkerをつくる教育を進めると言っています。

ですが今、求められるのは、一人ひとりが持つ本質的な価値や人生の幸福、自己効力感を伸ばす教育です。そこで「越境」という一つのキーワードを挙げるならば、課題を解決する「プロセス」を教育の主軸にしていくのが良いと感じています。

本質的な問いを小学校から学校の授業で考えていく、それを高校生が拾って実施していくというようなしくみがあれば、どんどん変わるかもしれません



地方創生に必要なものとは?


齋藤さん:MIRAI47が地域を越境して変革をしていくためには、それぞれの地域の人たちが、どんな考えを持っていくことが大切でしょうか?

ピョートル:グローカル(グローバル × ローカルの造語)が必要だと考えて考えています。一人一人は独立していても、あるパラダイムにおける大きな存在の一部であるという状態です。

ここまでの人類に幾多もの革命がありました。コミュニケーション、エネルギー、インフラの3つに着目すると、この100年間に3つの大きな変革があったことは明らかです。

例えば、コミュニケーションは電話、エネルギーは電気、インフラは電車、飛行機です。2000年頃にも同じように新しいものがでてきており、さらに大きな変革が出てくる予兆を感じています。

特に今、こうしてオンライン化が進み、宮崎県新富町にいらっしゃる齋藤さんや、出張先の広島にいるプロノイアのメンバーとも、僕はなんの違和感も感じることなく話せています。

コミュニケーション、エネルギー、インフラについての考え方をぐるっと変えて、場所を問わずアイディアを持っている人が同時進行で、グローバルに事業を展開することが考えられます。それがシリコンバレーがやっていることです。

とはいえ、私たちには生活する「場」があります。バーチャル化が加速する一方でリアルに会うことで、さまざまなイノベーションの可能性がこれからもあるでしょう。それが、地域が秘めた本質的な美しさ、可能性です。齋藤さんにとって地方創生とはどんな意味を持つでしょうか?


齋藤さん:二つの軸があります。一つめは、日本語でいう「俯瞰」ですね。物事を上から見て、地球全体から見る、ひいては宇宙からみる地球を想像します。そんな地球の中の小さな島国に住んでいる自分がいるというイメージです。

そう考えると「あそこの地域がどうだ」「あっちと比べてどうだ」という小さな比較の中で比べっこになっているのが、地方創生の課題だと感じます。

もっと大きく考えて、地球にある課題、世界にある課題を地方から解決しようとする取り組みを行いたいんです。その中で、SDGsはわかりやすい指標ではないかと感じます。

二つめに、起業家精神がまだまだ育まれていないことです。
そもそも、自己実現をせずに自分の気持ちを抑えている人が日本人は特に多く、リーダーシップを見つけられずに終わってしまう人も多いと感じます。

都内では、このコロナの中でもマスクをつけながら満員電車に乗っていますよね。「いつか地方に行きたい」と話しているけれど、いろいろなものを気にして東京という都市に呪縛されているように見えます。みんなが地方で自己実現していけば、地球や世界の課題をもっと解決していけると思うんです。



自己実現をするには?


ピョートル:「いつか海外に行ってみたい」とか「いつか地方に住みたい」など、「いつか〜したい。」というのはすごく刺さるキーワードです。僕も自分のチームに「〜したい」「〜やりたい」っていうのは間違った文法だって話しているんです。「〜したい」は、「やらない」ということです。「やる」か「やらない」か、結局は自分がその問いにどうアクションできるかということなんですね。本当に自己実現をしている人は、とにかく動いています。

日本では起業家という人を思い浮かべた時に、メルカリやFreee、Uberなどが頭に浮かぶ方が少なくないと思います。それが問題だと思うんです。

地方の学生が「起業家=世の中を変えるテクノロジーを作った人」って考えてしまうと、もうそれは自分が生きている場所とは違うSFの世界に感じてしまいます。それだと一歩踏み出すにはかなりハードルが高くなってしまいますよね。

まずは「Amazonで売ってみれば?」「カフェを立ち上げてみれば?」というプチ実験のサイクルの中で起業について学んでみるというレベルでいいと思ってます。「〜したい」という状態に留まってしまうことを考えれば、行動を起こしていることこそが、大きな前進です。

なんで僕がMIRAI47にエネルギーを入れているかというと、日本は大切な役割を持っている国だと思うからなんです。

地理的なポジションを見ると、中国、台湾、北朝鮮、韓国、ロシアと、アメリカに挟まれるような位置にあり、いろいろな国や地域とバランスを取る必要があります。

そんな複雑な地域だからこそ、和を守るという日本的なリーダーシップがこの地域を含め、世界に対して貢献できることではないかと感じているんです。潰し合いではなく「おいしいライチができたから食べてみて!」という精神を持って共生、共創を生み出してほしいです。



齋藤さん:相手や自分のバックグラウンドを知ることってすごく大事ですよね。
日本は農業の国です。五穀豊穣など、食べ物に感謝したり、八百八の神など全てのものに神様がいて感謝の気持ちを忘れないという文化が日本にはあります。
自分のリーダーシップの見つけ方においても、この文化ってすごく大切だと思うんです。

僕も「いつか〜したいは一生来ない」という話をよくします。
実はシリコンバレーに行ったのは、親戚が突然亡くなったことが発端なんです。

前日まで、その親戚とは会話をして「いつか〜したい」というようなことも話していたんです。でも、次の日に突然亡くなりました。
その時に「人間はいつ死を迎えるかわからない」「いつかは永遠にこない」ということがわかったんです。

ピョートル:死ぬというのは人類共通で、90歳まで生きても、人生はたったの28億秒余りなんです。1、2、3というスピードで、生きていること、できることが失われていく、ということを意識しないといけません。

心理学用語でヨナ・コンプレックスというのがあります。聖書の中でヨナという人物が出てくるんですが、ヨナは神様から「あなたはわたしが人類に伝えたいことを伝える人です」と重要なミッションを受けました。けれどヨナは今までと異なる自分、特別な自分になることが怖くなり、逃げだしてしまったんです。

ヨナと同じように、いくら能力や才能があっても「目の前にある選択肢を見たくない」「何の責任も背負いたくない」と逃げてしまったまま人生を終えてしまう人が多いと感じています。今日やるべきことを、今日やるというのがすごく大切です。


東京の呪縛を取り除く:人の価値観

齋藤さん:東京への一極集中の呪縛を解き放つという点で考えると「こうあるべきだ」という固定概念をなくすことがポイントだと感じています。ピョートルさんだったら「こうあるべき」はどう解き放ちますか?

ピョートル:東京の大手町で働き、お給与の高さイコール自分の価値だと思ってしまう人がいます。彼らは、大手企業のピラミッドの頂上に上がっていくことが人生の意味だと感じているんです。

それとは反対に「所有じゃなくて共有しよう」「お金を稼ぐよりビーチでサーフィンしよう」と考えているのがミレニアル世代です。

本当の幸せは人それぞれです。
でも、人間の根源的な幸せというのは、家族や友人と深い人間関係を作り、自分がやっている仕事で成長ができ、人に承認・感謝され、おいしいもの食べることだと思います。

そう考えたときに、東京本社で働いて役員になることが本当に幸せなのか、そのために何を犠牲にして生きているのかを考える必要があります。



都市化が地球環境を壊していく


ピョートル:現在、CO2の排出量が取り沙汰されることが多いですが、CO2排出量の3つの最大要因をご存知でしょうか。
一つは建物で、冷房/暖房によってCO2が排出されます。
二つめは乗り物で、交通機関です。車に電車、飛行機もそうです。
そして三つめは牛です。牛は地球全体で10億頭ほどおり、地球の23%の土地を使っています。

都市化が進むと、建物が建ち、交通の便がよくなります。ランチやディナーにハンバーグやステーキを食べる人も増えるでしょう。ファストフードで手軽にお肉が食べられることも需要を押し上げます。そう考えると、都市化というのはCO2の排出量を増やす肉牛を増産していると言えます。

齋藤さん:コロナ禍のステイホームでCO2の課題が少し改善したというデータもありますね。食べ物だと、大豆ミートをセブン・イレブンが販売し始め、ESG対応をしている会社が増えてきているなと実感しています。

これからは、僕たち自身が選択するもので、地球を守れるような時代になってきています。こういう感覚こそ、これからの起業家が持つ精神だと思います



これからの時代の起業家精神

ピョートル:僕が期待しているのは、起業家たちがもっと柔らかい価値観を世界にもたらしてくれることです。競争ではなく「みんなでやりましょう」というのが、政治やビジネスの世界で発揮されたらどうでしょう。

齋藤さん:柔らかい考えはすごく大切だと感じます。
実は僕も自動収穫ロボットのベンチャー企業も経営しています。

もちろん「農業やったこともないのに、何やっているの?」と言われて凹むこともあります。でも、そこで挫けないのは、自分自身の事業や行動が、世界の環境問題の解決に繋がっていると、心の底から思っているからです。



東京の呪縛を取り除く:しくみ


齋藤さん:今日の数多くのお話の中でも、聞いている方/見ている方からすると「それは、あなたたちだから言えるんですよ」って感じる人もたくさんいると思います。その中で東京一極集中いう組織から一歩、地方に踏み出そうとするための支援システム作りがあるとすれば、ピョートルさんはどんなものをつくりますか?

ピョートル:コミュニケーションと、情報のアクセスができれば、場所はあまり関係ないと感じています。なので、情報のアクセスを最大化できるように、地方にもっとテクノロジーを広げていく必要があります。

例えば佐賀県に行った時のことです。佐賀の高校生は「佐賀は遊ぶ場所がない、東京にいきたい!」東京だとインスタグラマーやユーチューバーになれる(地方の学生はなれないんだ、ムリなんだ!)」って言うんです。

でもよく考えてみてください。インスタグラマーやユーチューバーになるのに、場所って関係あるんでしょうか。何かをするのに必要なのは、リソースと人、知恵に対してのアクセスだけです。

齋藤さん:確かに今の時代はインターネットを使えば生計が立てられますね。
ただ、どうしても東京一極集中がひとつの社会的なシステムとして構造化されていると感じます。東京への一極集中を変える、もっとも重要な要素は何だと思いますか。

ピョートル:一つは「どこに行っても大丈夫」だと感じられる心理的安全性だと感じています。僕は日本にきて、来月で20年になります。その中で日本の皆さんに対して感じているのは、「自分の役割を超えた行動をしない」というマインドセットが強いということです。

アメリカでは、ロサンゼルス、ワシントン、ニューヨークと、それぞれの都市に特徴的な機能がありますね。時差もある中で、彼らはそれらの特徴を都市ごとにうまく橋渡しをして繋いでいます。

日本はアメリカと比べて狭い場所に色々な要素が散りばめられています。特に東京では、渋谷にはスタートアップ、霞ヶ関には政治の中枢があるのにお互いが繋がる機会がありません。これはとてももったいないことだと思います。

二つめとしては、個人が多様な体験を作っていくということが大事だと感じます。東京一極集中をやめて首都は京都、金融は東京、エンタメは福岡、ということを今すぐ行うことは難しいと思います。

まずは、一人ひとりが社会の構造を壊していくような動きが必要です。それぞれの領域を越境しながら、横のつながりを増やしていくということがポイントです。日本の方は、縦割りを超えたら「怒られる!」と感じている人が多いですが、怒られたら「あ、そこがボーダーラインだったのか、次はこうしよう!」と考えるぐらいがちょうどいいと思います。



齋藤さん:もっと質問を重ねたいのですが、最後に今回のゲストとして、こゆ財団のメンバーから、それぞれピョートルさんに質問をぶつけさせてください。



どうやったら物事を俯瞰できる?


高橋さん:自分は俯瞰することが苦手です。どうやったら、世界の問題を俯瞰的にみて行動できるのか聞かせてください。

ピョートル:僕が育った国は、行き過ぎた社会主義から、行き過ぎた資本主義になった国です。社会主義から資本主義の切り替わりの時期に学校にいたんですが、今年「正しい」と教わったことが、来年には「間違っています」と言われるんです。

誰が正しいのか、何が間違っているのか、わからなくなりました。
それだったら「事実は自分で調べればいい、学校にいかなくてもいい」と強く思ったんです。

これと同じように、世の中には「正解」と思われていることも、ある側面から見ると「不正解」ということがあります。自分が正解と考えているものの中に相手不正解と考える相反するものがあるんです。

なので、相手が言っていることに納得できない時は、一回、脇にに置いてみてください。そして、自分の中のジレンマをひっくるめて、正解も不正解も全部あるという感覚で同じ物事を見てください。相反するものが同じところにある、どちらも同時に大事にしていくことが大切です。

そしてその時、相反するものを同時に大事にしようとすると、違和感を感じます。その違和感にに好奇心を持ってほしいんです。

みなさん、違和感は好きではないと言って捨てたり切ろうとしたりしますが、、逆に心地よいことって、本当に良いことなのか?と考えてみてください。心地よいことって意外とリスキーです。

心地よいって「楽だな、気持ちいいな」と思いますが、その心地よいことに依存していた場合、心地よいことが全てなくなったら、困るのは自分です。次の一歩、次の成長のために、相反することを行動してみてください。



世代を越えた対話に必要なスタンスとは?

あずささん:親って万能じゃないなと感じる場面にぶつかることがあります。こどもの方が柔軟で素直です。親の方が「正しくなくてはいけない!」と感じ、先生や大人が抱え込んでしまうことが多いです。そんな中で、世代を超えて対話をするために心がけていることがあれば教えてほしいです。

星野:今日、ちょうど授業をしてきた高校生に伝えたメッセージを共有させてください。教壇に立っているからといって、みんなのために何かを教えたり、何かをするために来ているのではなく、一緒にいるこの時間を共につくる一人の人間としてこの場にいること、教室のみんなも一緒にいる時間を共につくるメンバーとして、教室にいてほしいという想いを伝えました。

みんなが知っていて、わたしが知らないこと、わからないことは教えてほしいということも伝えて、共にお互いのために場をつくろうというスタンスととっています。

ピョートル:僕は、こどもと接するときは平等な関係を意識しています。
僕の方がもちろん年上だし経験もあります。けれど彼らには可能性があります。「10歳のこども」として目の前の人物を見るのか、「30年後すごい結果を出している大人」と見るのかの違いです。

この人が30年後の世界を変えるんだという意識で接すれば、その子はなんで僕から信頼されているのかはわからないままだけれど、その子の持っているエネルギーや情熱、アイディアが輝き始めるんです。


行動を促す、心の越境を加速する方法とは?

稲田さん「越境」という言葉を思い浮かべた時に、中から外へという物理的に行動して外側へと広げるイメージがありましたが、自分の内側の精神的な越境というのもキーポイントになると感じています。なかなか心の越境ができず行動できなかった人が、越境できたような事例があれば教えてください。

ピョートル:僕の家族は、母は農家で父はブルーワーカー的なトラック運転手の仕事をしていました。とても小さい村で、母がごはんを作っている時に自由に森に行ったり動物と接したりしていました。そこで気づいたのは、母からの圧倒的な信頼があったからこそ僕は自由に外の世界に出ていき行動できたということです。

起業家になってほしい人、心の壁を超えてほしい人には、好奇心を自由にして良いよ、信頼しているよ、尊重しているよ、というのをしっかりと伝えることが大切です。

外からみていると「早く越えてほしい!」と焦ったりやきもきとする気持ちが出てくることが多いと思いますが、その壁を越える早さはその人の選択で、強制するものではありません。